美しい姿勢と聞くとどのような姿勢をイメージしますか?背中がぴんとまっすぐで猫背になっていない姿勢でしょうか。
たしかに猫背は姿勢が良いとは言えません。ですが、仮に背中がまっすぐであっても良いとは言えません。
大事なのは背中のしなやかさ。
背中がしなやかに動くことが美スタイルの基本になります。
背骨の可動域
背中のしなやかさといっても、どのくらい動けばしなやかと言えるのか?分からないですよね。背中が動かせる範囲について見ていきましょう。
背骨は、椎体という小さな骨が繋がってできています。頚椎・胸椎・腰椎・仙椎の4つのパーツに分かれて、頚椎7個・胸椎12個・腰椎5個・仙椎1個(5つの仙椎が融合したもの)で出来ています。この24個の椎体の動きが背中のしなやかさに繋がります。
それぞれパーツごとに機能が違い、可動範囲も変わってきます。屈曲は体を丸める動き、伸展は反らせる動き、回旋はひねる動き、側屈は横に倒す動きです。パーツによってそれぞれ得意不得意があります。
《脊柱の可動範囲》
頚椎 | 胸椎 | 腰椎 | |
屈曲 | 30°〜50° | 30°〜40° | 50° |
伸展 | 80°〜95° | 20°〜25° | 15° |
回旋 | 約90° | 約60° | 約10° |
側屈 | 約45° | 約25° | 約15° |
腰椎は屈曲が得意ですが他の動きは苦手。特に回旋の動きではわずか10°しか動きません。一方、胸椎は回旋の動きが得意です。他の動きはそれに比べるとかなり低いですね。頚椎は伸展と回旋が得意です。腰椎や胸椎と比べると、全体的にどの方向にもよく動くことが分かります。
さらに掘り下げるとそれぞれの椎体ごとの可動もありますが、この動きをスムーズに出来る状態がしなやかな背中となります。
動きの悪い椎体があると、他の椎体が本来動く以上の可動を要求されます。例えば胸椎の動きが悪い場合には体をひねる動きで腰椎に回旋ストレスがかかります。日常生活でこのストレスを繰り返すことで痛みや不調が出やすくなるのです。
全ての動きが正常であることが、背骨周辺の筋肉の拘縮もなく循環も良い状態と言えます。たとえ背中がまっすぐで綺麗に見えても、動きが悪い状態ではしなやかな動作が出来ず痛みや不調が起こりやすくなってしまうのです。
しなやかな背中の作り方
しなやかな背中とは、常に猫背でもなく常に真っ直ぐでもなく色んな形になれる背中のこと。
色んな動きが出来る=脊柱周辺の筋肉の状態も良いと言えます。反ることもでき屈むこともできる。ひねる動きや横に倒す動きもスムーズにできる。そんな背中がきれいな背中です。
一見、姿勢が良く見える人の中には真っ直ぐのまま丸くなることも反ることも苦手な方がいます。そのような背中は周辺の組織が拘縮し、筋肉の動きが少なく疲労が溜まりやすくなっています。
姿勢を良くしよう!といつも筋肉を緊張させて保っているが故に固まってしまうこともあります。本来であれば背中は緩やかなカーブを描いていて、必要以上に力をいれなくても綺麗な姿勢を保てます。
どんな動作にも対応して、しなやかに動ける背中はどの動きに対してもしなやかで美しいシルエットを作れるのです。
丸くなる練習(屈曲)
姿勢が一見良さそうに見える人に多いストレートタイプは自分が丸くなれるか?確認してみましょう。
膝を抱えて丸くなり、後ろへごろん。戻ってこれますか?
おきあがりこぼしのように、またもとの体勢にもどってこれるでしょうか?
後ろへごろんとしたきり戻れそうな気配がない場合、背中がストレートになっているかもしれません。戻れそうで戻れない場合は腹筋力も使いますので、そこらへんが弱い可能性もあります。
苦手な方は丸くなる練習をしていきましょう。
- 手を組んで前に伸ばします。
- 体は倒さず背中を丸くします。
- 腕を引っ張られているようなイメージで前に伸ばしながら八の字を描きましょう。
ストレートになりがちなのは胸椎です。腰だけでなく上部(肩甲骨の辺り)を丸くするよう意識をして練習をしてくださいね。
反る練習(伸展)
ストレートの方はもちろん反る方も苦手。また、猫背の方も当然苦手です。
反るという動きは日常であまりしないですから、どうしても硬くなってしまいがち。苦手な方はかなり多いと思います。ここをしなやかにすることは背中のしなやかさのポイントにもなります!
- 手をバンザイした状態で壁の方を向き、壁にぺったり立ちます。
- 手のひら・胸・膝・つま先が出来るだけ離れないようにお尻を下に下ろしていきましょう。
猫背の方は右のスタートの体勢がすでに辛いかもしれません。ほとんど動けないようなら背中の伸展方向への可動がかなり悪くなっているということです。
毎日少しずつ練習をおこなって、背中の伸展練習をしていきましょう。
もしこの方法でどうしても痛くて無理なら以前に紹介した背中のストレッチもおすすめ。
- 四つん這いになった状態から手を前に伸ばしましょう。
- お尻は天井に突き上げ、脇の下を床に近づけます。
ポイントは背中が丸くならないように。脇を床に近づけるような気持ちで背中の上部を伸ばしていきましょう。
ひねる練習(回旋)
次は回旋。回旋は腰はあまり動かず胸椎で動いています。
胸椎の動きが悪い人は回旋が苦手。また、肋骨が籠状になっていない浮遊肋骨部分(第11胸椎・第12胸椎)や回旋をあまりしない腰椎から回旋する胸椎に切り替わる第12胸椎部分で負担がかかりやすくなります。
全体的に動きを良くしていくことで負担が分散され痛みが出にくくなり、しなやかな回旋動作が出来るようになります。ここでは初心者向けの回旋ストレッチと少し柔軟性が出てきた方向けの回旋ストレッチを2つ紹介していきます。
- 左足にタオルを引っ掛け、右手で端を持ちます。
- 左手を真横に伸ばし、左足を右側に倒していきます。
- 左肩甲骨が床から浮かないように。体を捻りながら左足を床に近づけます。
- 左右交代します。
右腰は浮いちゃってOK。むしろ背中の上の方まで浮かせて上部からの回旋を意識すると良いですよ!
少し柔軟性が出てきたらこちらのストレッチもとりいれてみましょう。上手く出来ない方はまだ固いのかも知れません。
- 膝を付き片腕は前に伸ばします。
- 反対の手を体の下へ通して逆側へ伸ばしましょう。
腕だけの動きにならないように体をひねっていきます。もしひねられている感じがしなければ、胸椎が固まっている証拠。初心者のストレッチから始めましょう。
横にしなる練習(側屈)
最後に側屈です。胸椎は肋骨があるので側屈しにくく、腰椎は構造上側屈しにくくなっています。
更に側屈する時には背骨は回旋も加わるようにできています。真横に曲がっていく訳ではないので、その自然な動きが出来るようゆっくりとしなる感じで側屈の練習をしましょう。
- 手を上にあげて反対の手で手首をもちます。
- 息を吐きながらゆっくり横に倒れていきます。
座ったままでも立ったままでもOK!筋肉が張っていても側屈しづらくなります。背骨も筋肉も動かすイメージで横に倒しましょう。
まとめ
背骨は体のあらゆる動きに対応するため、動くために1本ではなく仙骨を含め25個の椎体に分かれて形成されています。
まっすぐな状態を保つことが良いわけではなく、本来のS字カーブを定位置としてしなやかに動ける背骨が理想です。
今回の体操で苦手な動作があったら是非繰り返してしなやかな背中を目指しましょう。
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