スクワットのフォーム指導を受けると「膝をつま先より前に出さないように」と言われることが多いと思います。ですがスクワットにはさまざまなやり方があり、膝を前に出すスクワットも存在します。
なぜ、膝を前に出さないように言われるのか?スクワットの際に意識したい膝の位置と膝を前に出すリスクについて書いていきます。
膝を前に出してはいけないと言われている理由
トレーニングを安全に効果的に行うためにはフォームが大切です。
スクワットでよく言われるポイントが「膝をつま先より前に出さない」ということ。その理由としては『膝を痛める』『臀筋に効かない』などがあります。
そう言われる理由は以下の4つのことが関係していると思われます。
スクワットで膝を前に出してはいけないと言われる理由
- 膝関節への回転ストレスが大きくなる
- 関節面や周辺組織へのストレスが大きくなる
- 筋力が弱いと膝関節へのストレスが倍増する
- 大腿四頭筋が使われることで膝蓋骨への圧力が強くなる
これが膝を前方に出した時に起こることです。それぞれ詳しく解説していきますね。
膝関節への回転ストレス
人が直立している時にかかる力は上からの重力と下からの床反力です。まっすぐ立っている状態では重心線上に体があるので関節が安定し最小限の筋力で立っていることができます。
ところが、股関節や膝を曲げ重心線上からズレると関節へ回転する力(回転モーメント)が高まります。それにより回転にブレーキをかけるための筋肉が働いてくるのです。
回転する力は関節が重心線と離れるほど大きくなります。スクワットで膝が前に出ると膝が屈曲される力(膝関節への回転モーメント)が大きくなり、それにブレーキをかける大腿四頭筋への負荷が高まります。逆に膝を前に出さずにお尻を後ろへ突き出すように行った場合には股関節を屈曲する力(股関節への回転モーメント)が大きくなり、それにブレーキをかける臀筋やハムストリングの負荷が高まります。
このようにスクワットは膝を前に出すか?出さないか?によって負荷のかかり方が変わってくるのです。
膝を前に出すスクワットは大腿四頭筋の強化になり、出さないスクワット は臀筋やハムストリングの強化になるのです。
ただし、初心者の方が膝を前にだしてスクワットを続けると膝を痛めてしまうリスクが高まります。その理由はこれからお話していきます。
膝はとても痛めやすいので、なるべく膝への負担が少ない安全なやり方でのスクワットが推奨されています。やってみると分かると思いますが、膝を前にださなくても大腿四頭筋は十分鍛えられますからね。
関節面や周辺組織へのストレス
スクワットの際に使う関節は主に股関節と膝関節です。(足関節も使いますが、トレーニング負荷の話ではあえて外します。)
直立した状態ではこの関節にかかる負荷は体重の1倍程度になりますが、歩くときには体重の2〜3倍、階段の上り下りでは6〜7倍もの負荷がかかります。スクワットでの負荷は階段の上り下りと同程度となり、2つの関節にはとても大きな負荷がかかってくることになります。
構造的にみると、股関節はソケットに収まるような関節でしっかりと骨同士が結合され、更にその周りを強靭な靭帯が守っています。ですが、膝関節はレールの上に車輪が乗ったような形になっているので骨性の支持がほとんどありません。ですので安定させるための半月板や前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯など強靭な靭帯の役割がとても重要になります。
膝への負荷が高まるスクワットでは周辺組織へ過剰なストレスがかからないように注意しながら行わなければならないのです。
筋力の弱さと関節ストレス
前述のように骨性支持の低い膝関節をカバーしているのが半月板や靭帯ですが、それらの組織へのストレスを軽減しているのが筋肉です。
スクワットで回転の力が大きくかかったときに靭帯などへのストレスを減らすために大腿四頭筋という太腿の前側の筋肉がブレーキをかけて守っています。
実は大腿四頭筋は膝関節を伸展する(伸ばす)働きもありますが、屈曲(曲げる)にブレーキをかける働きが強い筋肉です。座る・しゃがむ・走るなど日常の動作では主にブレーキとして働きます。
大腿四頭筋の筋力が弱くなることで半月板や靭帯へストレスがかかりやすくなってしまいます。ですので負荷のかかるようなフォームでスクワットを続けると半月板や靭帯に過剰なストレスがかかり故障リスクが高まるのです。
筋力が弱い人ほど膝を前にだすようなスクワットは控えたほうが良いということですね。
大腿四頭筋と膝蓋骨への圧力
膝を曲げた時に働く大腿四頭筋は膝蓋骨を介して脛骨へ付着しています。
それによってスクワットなど膝を屈曲した時に大腿四頭筋が収縮すると膝蓋骨が大腿骨へ押し付けられるような状態になります。膝蓋骨の下には膝蓋下脂肪体という組織がありその部分に圧がかかってきます。
膝蓋下脂肪体にかかる圧力は膝の屈曲角度が大きくなるほど比例して大きくなり、大腿四頭筋が収縮するほど大きくなります。
膝を前に出したスクワットでは膝の屈曲角度が大きくなるので、大腿四頭筋は強く引っ張られ収縮し膝蓋下脂肪体への圧力はとても大きくなります。この圧力によっても痛みを感じてしまうということも分かっています。
まとめ
スクワットは下半身の大きな筋肉を鍛えられ、全身のトレーニングとも言われているほど重要なトレーニングです。
ですが、負荷のかけ方によっては膝を痛めてしまう可能性がありますので筋力が弱い人ほどフォームは基本通りに「膝を前に出さず」行ったほうが怪我のリスクがなく安全に筋力強化していけます。
スクワットをしていると膝が痛くなってしまう方は、膝が前に出ていないか?深く落としすぎていないか?チェックしてみましょう!
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